聴覚過敏(リサイクル)

子供の頃から、先天的な聴覚過敏に悩まされている。
これについては、いつかは書こうと思っていたので、今書くことにする。


例えば、運動会のピストルの音。子供の頃からアレが恐くて、かつ嫌いだった。
いや、「嫌い」とか「恐い」レベルの問題ではない。聴くだけで、背中をいきなり包丁で切り裂かれたようなショックを覚えるのだ。
今でもそうだ。
だから、小学校の運動会やらその予行演習やらは、まさに地獄そのものだったものだ。
華やかなBGMと黄色い歓声につつまれた運動場を尻目に、私は応援席でうずくまり、ひたすら耳をふさぎながら震えていた。
そしてその間、こんな糞くだらねえ行事を思いついた糞バカヤロウを引きずり出し、古今東西のあらゆる虐殺技術を用いてジェノサイドする妄想に延々とひたりつつ、爽やかな秋のひとときは幕を閉じる。
こんな事を繰り返していれば有名人になるのは当然の理。断言するが、当時の水戸市立S小学校在校生で、「耳塞ぎのS藤」の名を知らない者はいない。また、担任になった合計五人の教師は、極端な臆病者として私の存在を記憶し続けていることだろう。
まあ、当時の私の小学校生活について書くと長くなるのでやめておくが、幸いにして「目立たないように耳をふさぐ技術」が身に付いたおかげで、なんとか中学の運動会では誤魔化しきることに成功した。
(公立中ではなかったので、小学校からの知り合いはほとんどいなかった)

さて、ここまでなら聴覚過敏の経験談としてよくある話だが、どうも私の場合はかなり重篤なようだ。
実は、バスや電車の「プシュー」というドアの開閉音。あれも駄目なのだ。
と言っても、何から何まで駄目というわけではない。むしろ大抵の場合は大丈夫なのだが、運悪く一定以上の音量が出るやつにぶち当たると、もういけない。聞いた途端に瞳孔が開き、息が止まり、全身の筋肉が硬直する。
プシューではない。
ぶぉぁジューーーーッ!!!!!!!!
……という感じだ。
今「音量がどうこう」と書いたが、必ずしも音量だけがキーになっているわけではないかもしれない。周波数も絡んでいるのかもしれないが、よくわからない。
ただ、傾向として言えるのは、古い車両になればなるほどハズレである可能性が高いということだ。もっとも、ピカピカの最新式と思えるバスが地獄の御輿だった事もあるので、油断はできないが。*1
中学校の頃は、水戸市の中心街を縦断するような形でバス通学していたのだが、三年も乗り続けているうちに、車両の形や車外広告を見ただけで「ああ、このバスは乗車用ドアは大丈夫だが、降車用の方はヤバい」と判断できるという、有り難くない特技が身に付いてしまった。バスのえり好みをしていて登下校が遅くなったこともしょっちゅうである。


最近ではバスに乗らない代わりに、電車によく乗る。営団(意地でも東京メトロとは言わない) や都営の地下鉄は大抵大丈夫。都心を走っているJRも全然OK。
千葉県東部の外房線内房線で使われているボロい車両*2は「駄目」と「大丈夫」の境目ぐらい。運良く総武・横須賀線直通の走ルンですが来てくれれば万々歳なのだが。
東武系になると「ハズレ」にぶち当たる可能性がかなり高い。(東武野田線は100%アウト)
数日前、あまり面識のない人と一緒に東武線に乗ったのだが、運悪くこの車両がハズレのタイプだった。
話しかけられた時に耳をふさいでいては失礼だと思ったので、途中の駅で「それじゃ、私はここで乗り換えますので」と降りてしまった。
本当の乗換駅はもっと先なのに。
これが親しい友人だったら。「ドアの開閉の時に耳ふさぐけど、気にしないでね」とでも言えるのだが。


まあ、そういうわけですから、これを読んでいる顔見知りの皆さん、バスや電車で同席した際に奇妙な行動をとっても、それにはちゃんと必然性があるので、生暖かく見守ってつかぁさい。

*1:5/26追記・当時水戸を走っていた関鉄所属の北村製作所製の車は、乗車ドア・降車ドアともに100%ハズレだったことが判明。おのれ、北村製作所!!

*2:113系と言うらしい